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  志芸の会公演 ■第一回 新春を寿ぐ「翁」と「狂言」の会  
 
  《翁》祈りの藝

  あなたは締め出されることなく、無事に席につけたであろうか。
《翁》は客が舞台に入る前から始まっている。演者は別火(べっか)と言われる精進潔斎を、昔は何週間も前から行った。一点に向かって、演者がいつもよりまして気持ちを集中させていくのは今も変わらない。


 当日。とりわけ静寂が要求される。耳傾ければ、揚幕の向こう側から火打石の音。鏡の間(かがみのま)では祭壇が設けられ、最上段には面箱が祀られている。あくまで面は御神体である。その前では演者たち一同が盃事(さかづきごと)を行っている。
 

 幕が開く。先頭はやはり面箱。地謡はいつもの地謡座に位置しない。鼓も三丁。久田氏が頭取(とうどり)。一同揃うと、うやうやしく礼をする。《翁》は礼に始まり礼に終わるとも言われる。


 「どうどうだらり」と謡い始める。今回の下掛(しもがかり)のように濁音で重々しく謡われるのが本来である。まず千歳(せんざい)。御子息の忠亮君が若さ一杯に舞われる。それもそのはず、もともと鎌倉時代、式三番といわれたころは児(ちご)が演じた露払いである。
 

 翁は名手の高林白牛口二(こうじ)氏。祈祷の舞。舞い終えると翁帰り。そして、忠重氏の
三番三(大蔵流の書き方)が始まる。揉(もみ)の段は体全体を使う。烏飛びにご注目あれ。鈴
の段は神楽鈴をボレロのように高める。そう言えば、先の茶道展に正月の床飾りとして神
楽鈴とあったが、めでたい三番三のものに違いない。
 

 そう、《翁》は、客は見せるものではない。もともと神に見せるものである。御神事として翁を専門に演じるグループが、能楽の劇団成立以前に存在していたことがわかってきた。
 

 私たちも共に祈ろう。「志芸の会」が発展しますように。
 世の中が平和でありますように。そして、・・・
 
 
 
  文 関屋俊彦氏 (関西大学教授)  
 
 
 
   
         
   
 
 
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