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  志芸の会公演 ■第三回 新春を寿ぐ「翁」と「狂言」の会  
 
     
 
     
 
       
 
         
 
  門出の《翁》
 

 《翁》は「能にして能にあらず」と言われている。このことばは一体いつから、誰が言い出したのか。実は大変深い意味を持っていることがわかってきた。
 

 能楽の成立は一口に六百年前と言ってきたが、《翁》となると、翁を専門に演じるグループが観世父子の活躍以前に存在していたことがわかってきている。『春日臨時祭記』で見ると、記録の初出としては元弘三年で六百六十九年前、古形としては弘安六年で七百十九年前になる。これが翁の歌詞の類歌となると、今様・神楽歌まで考えられ、こうなると平安時代を視野に入れなくてはならない。一体どこまで遡るのか。河口慧海のチベット語説は否定されたが、それに代わる説はどこまで広がるのか。まさしく《翁》には能楽師の、そして私たちの体にも流れている神聖な何かがあるのである。
 

 座に着き、静かに耳を傾ければ、揚幕の向こう側から火打石の音。鏡の間では祭壇が設けられ、最上段には御神体すなわち面を入れた面箱が祀られている。その前で演者たち一同が盃事を行っている。
 

 幕が開く。先頭は面箱持。晴の役で狂言方が勤める。全員侍烏帽子・素襖裃の礼装で、うやうやしく礼がなされる。地謡はいつもの地謡座に位置しない。鼓も三丁。下掛りでは「どうどうたらり」と謡われる。千歳(今回は狂言方が兼ねる)は若さ一杯に舞う。
 

 翁は豊嶋三千春氏。今年、金剛能楽堂が新しくなる。三番三(大蔵流の書き方)は。まず揉
の段。大鼓も加わり、掛け声をかけての烏飛びに注目あれ。鈴の段は黒色尉面をつけ、おごそかに神楽鈴をボレロのように高める。
 

 《鞍馬参り》は『天正狂言本』にも「鞍馬の大悲多聞天の御福を主殿に参らせたりや」とある。
  《止動方角》と曲名にもなっているが、これは馬を静めるための呪文。そう、今年はウマ年である。

能楽学会も発足する。今年はウマくいきますように。
 
 
 
  文 関屋俊彦氏 (関西大学教授)  
 
 
 
   
         
   
 
 
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