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  志芸の会公演 ■第八回 新春を寿ぐ「翁」と「狂言」の会  
 
     
 
     
 
     
 
         
 
  笑む《翁》 

 やはり、どう見ても翁の面は笑っていらっしゃる。目尻が下がり、顔を皺くちゃにして笑っていらっしゃる。
 
 ≪翁≫は神聖なるもので、観客は厳粛な気持ちで見なければならない。それはわかっている。世阿弥も三番三(大蔵流の書き方)で笑わせることがあってはならないと釘をさしている。(『申楽談儀』)。それでも、あのお顔を見ていると、笑顔だけに伝染する。楽しい気分にさせられる。翁=童子説もあるが、人生、笑って楽しく過ごしてみないかいと導いてくれる老人姿がふさわしい。
 
 ≪翁≫は翁を演じるグループがあって、それは能楽大成の中世以前から存在していたという。神事ごとであったからとの考えからきている。一方で芸能の根源を≪翁≫に求める折口信夫の考えもあった。となると、翁の面を見ていると、芸能の発生は「笑い」であったと考えてみたくなる。天照大神の岩戸伝説が納得できるのである。
 
 本日≪翁≫を演じられるのは円熟期に差し掛かられた豊嶋三千春氏。人間国宝豊嶋彌左衛門氏の御長男。本会の第三回(平成14年)以来のお出ましとなる。
 
≪翁≫では、面そのものが御神体である。それにしても演じられた後は、どう扱われるのであろうか注視したい。
 
 
 狂言は、今年も茂山忠三郎父子が応援に駆けつけられた。≪二人大名≫は忠亮・良暢両君で演じられる。高慢な大名を若いだけに、どこまで演じられるか見もの。≪真奪≫は珍しい曲。最近、この会では遠い曲を出してくるので見逃す訳にはいかなくなっている。中世の立花の流行を背景としている。たとえば池坊では初代千慶が佐々木道誉の息子高秀邸で1463年に菊を飾らせたところ、洛中の好事家が押しかけたという(参考・拙稿「室町時代の天才たち」=『華道』平成15年度〜16年度連載)。真(心トモ)には季節の花を使っていたのかもしれない。
 
 おや、そろそろ火打石の音が聞こえてきましたね。
やはり静かに見ましょう。

 
 
 
  文 関屋俊彦氏 (関西大学教授)  
 
 
 
   
         
   
 
 
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