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  志芸の会公演 ■第九回 新春を寿ぐ「翁」と「狂言」の会  
 
     
 
     
 
         
 
  みたりの《翁》 

《翁》で前から気になっていたのが舞い終わったあと翁面はどうするかであった。実際には後見が切戸口から持って出ていく。《翁》は始まる前から鏡の間で神事が行われている。祭壇を設け、一番上に翁面を入れた面箱を祀る。出てくる時も面箱持ちが先頭である。それほど大事な翁面なのにと変な感じがしていた。
 
 しかるに昨年五月、横浜能楽堂で行われた古式の《翁》復元を見て納得できた。今の《翁》は千歳・翁・三番三で構成されているが、古式の場合は延命冠者と父尉が加わる。その時の退場の仕方は千歳が面箱を持ち橋掛かりを通っていった。式三番と呼ばれて神事が中心であったものがより簡素化されたのが現在の形なのであった。知っておられる方には当たり前の話なのかも知れないが《翁》は見れば見るほど奥の深いものである。今回は宝生流の辰巳満次郎氏がつとめられる。
 
 さて、本年も珍しい狂言を提供してくれた。《富士松》がそれである。同曲は連歌の付け合いが主体となっている。連歌を素材にした曲はほかにもあるが、具体的にこれほど駆使しているのは珍しい。ことばを映像に置き換えて脳(能ではない)の活性化を堪能されるとよい。
 
 和歌・連歌の教養が能楽に影響を与えているのは言を俟たない。ちなみに室町時代後期成立の『連珠合璧集』に「翁とあらば さびたる 人なとがめそ みたり三人也 舞 草 霜をいただく 浪のしは しらぬ ひよ鳥 釣する 伏見」と縁語を記載する。「みたり」と「舞」は式三番のことである。
 
 茂山忠三郎氏が今年も応援に駆けつけてくださった。昨年十二月の「能楽フォーラム」では宝塚で廿年も教えていらっしゃるとの興味深いお話しが聞けた。
 
 忠亮氏は《成上り》で登場される。御自身のホームページも立ち上げられたので見てあげてください。お弟子衆の追い込みも激しい。さらなる精進を湊川神社でお参りして帰りましょう。

 
 
 
  文 関屋俊彦氏 (関西大学教授)  
 
 
 
   
         
   
 
 
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